2024.4.7礼拝「逃げなさい」宣教 水野英尚 マルコによる福音書13章14~27節
マルコによる福音書13章は、紀元70年のローマによるエルサレム神殿の破壊を前提に、このユダヤの人々に甚大な影響を与えた事柄を、どう理解していくのか、「読者」となるキリスト者たちに、それを伝えようと黙示文学的なモティーフとして描かれていると言われています。紀元70年に起こった「ユダヤ戦争」は、ローマ軍という圧倒的な武力の差によりエルサレム神殿は、「一つの石も残ることのない」壊滅させられます。この戦いのユダヤ側の正義は、「信仰を守る」ということであり、自分たちの信仰の正しさを信じ、神の正しさを証明するための戦いでありました。強力な武力を誇ったローマ軍を相手に、ユダヤ人たちは武器をとって戦いました。一方、当時のキリスト者たちは「非戦」の立場をとり、戦うことをせずに、ユダヤ戦争勃発前に「逃げた」と言われています。これは、ユダヤ人にとって許しがたい裏切り行為となり、「裏切者」の烙印を押されてしまいます。また、当時のキリスト教はユダヤ教の一派だと考えられていましたから、戦争を引き起こすユダヤ人ということで、ユダヤ人でない人たちからもまた、非難の目を向けられていたようです。